震災によって解体を余儀なくされた家屋は、公費解体という制度の元、国の予算と管理体制の中で解体処理されていく。基本的に民間が介入する余地はない。奥能登珠洲市にある銭湯「海浜あみだ湯」は、その家屋の一部を引き受け燃やすことで、水を温め続けている。持ち込まれる複雑な感情と共に幾つもの家屋を、まるで街を弔うように燃やし続けている。我々が引き受け記録している物語は、市内の災害ゴミ置き場にあるそれの、ほんの一部でしかない。そんな些細な物語に寄り添った記憶と介入の余地を生むドキュメンテーションが、地域の小さな希望を温められたらと祈りを込めて。
仮( ) -karikakko- 楓大海/ 新谷健太
奥能登珠洲市を拠点に、2017 年より始動した新谷 健太(しんやけんた・左)と楓 大海(かえで ひろみ・右)によるアートコレクティブ。ともに2015 年、金沢美術工芸大学油画専攻を卒業。土地に根付く歴史文化背景を紐解き、様々なモノ・コト・ヒトが交錯する環境(場所と状況)を仮に( ) で括ることで、関係性と価値観の変容を促すプロジェクトを創出。「主体/ 客体が入り混じった場/ 況をケアする身体性としてのメディウム」をテーマに活動。そんな仮に( ) で括られた環境に世界の複数性を見出し、社会に応答し続ける。